RICEで止まっていませんか?応急処置の変遷と新たな概念 "PEACE & LOVE" とは?

皆さんこんにちは。

大野です。

 

すみません最近更新できませんでした。。。

細くも長く続けていけたらと思っていますので、引き続きお願いしますm(_ _)m

 

 

ということで本日は新たな応急処置の考え方 "PEACE & LOVE" についていけたらと思います。

 

 

今回の出典はこちら!

blogs.bmj.com

 

こちらはイギリスのスポーツ医学に関する有名なジャーナルである "British Journal of Sports Medicine" のブログで書かれた内容になります。

 

ブログといってもしっかり文献を参考にして書かれていますので、適当なものではありませんのでご安心ください。

 

 

 

それでは!

 

応急処置の変遷

 

さて、皆さんが知っている応急処置の考えは何でしょうか?

 

”RICE”を聞いたことある人は多いと思います。

 

ですが変遷としては"ICE"→"RICE"という流れがあって、その後に "PRICE" や "POLICE" という概念へ発展していきました。

 

そして今回紹介するのは "PEACE & LOVE" という最新の案内です!

 

その前に上で紹介した3つについて簡単に触れていきましょう!

 

RICE

言わずと知れた"RICE"。それでは簡単に見ていきましょう。

 

参考文献はこちら↓

www.ncbi.nlm.nih.gov

 

足関節捻挫に対する応急処置の話ですね。

 

基本的な情報として・・・

Rest(安静)

Ice(冷却)

Compression(圧迫)

Elevation(挙上)

の頭文字をとったものです。

 

具体的な研究内容は省きますが、キーポイントとしては3点まとめられていましたが、以下にそのうちの2点を掲載しておきます。

 

 

・今回のランダム化比較試験によって足関節捻挫に対するRICEが有効であると決定づけるには不十分なエビデンスが示された。

 

・治療や応急処置の決定はそれぞれの方法の相対リスクや効果の比較検討を行った上で、個人に応じてされなければならず、さらに専門家の意見とガイドラインにのっとっているべきである。

 

 

まー研究としては効果はまちまちということですね。

 

ちなみに世界で最高級に良いエビデンスがまとめられている全米アスレチックトレーナーズ協会(NATA)の "Position Statement" でもアイシングと圧迫、挙上に関しては推奨されてはいましたが、エビデンスレベルが"C"と最も低い値となりました。

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NATA Position Statement

現場で使うには問題ないといった程度でしょうか??

 

 

PRICE

RICEの次に出てきた概念として有名なのがこちら。

 

トレーナーの方や、しっかりと勉強されている方は知っている人も多いかと思います。

 

参考文献としてはこちら↓

https://www.physiosinsport.org/media/wysiwyg/ACPSM_Physio_Price_A4.pdf

 

 

同じく足関節捻挫に対する応急処置の話です。

 

こちらもササっと内容確認しましょう。

 

こちらは先ほどのRICEに"Protection" の"P"が加わったものになります。

 

"Protection"とは”保護”のことで、患部を固定するなり松葉杖で非荷重にするなりで痛みが出ないようにしましょうと言ったもの。

 

「RestとProtectionは少なからず受傷後3日はすべきでしょう」とのこと。

 

どうやらProtectionはエビデンスがどうこうというわけではなく、現場の声(経験知)としてあるべきものを追加したようですね。

 

正直上の参考文献はかーなり長い文献ですが、後に説明する「受傷直後に適切な負荷をかける」ことに関しても説明されており、なかなか読みごたえがありました!

 

医療従事者の方やトレーナーを目指す方などは是非1度読んでみてください!

 

 

POLICE

さてこちらがPRICEの後に出された概念です。

 

その名も”POLICE”です。

 

こちらの参考文献はこちら↓

bjsm.bmj.com

 

こちらの文献はイギリスのスポーツ医学に関するジャーナル"British Journal of Sports Medicine"にて発表されたものです。

 

POLICEの内容から確認していきましょう。

 

P・・・Protection(保護)

OL・・・Optimal Loading(適切な負荷)

I・・・Ice(冷却)

C・・・Compression(圧迫)

E・・・Elevation(挙上)

 

変化としては"Rest"がなくなり、新たに"Optimal Loading"(OL)が追加されました。

 

"Optimal Loading"(OL)とは改めて、「適切な負荷」という意味です。

 

語弊を恐れずに説明すると「受傷したら何もしないのではなく、患部にどんどん負荷をかけていこう」といったような考え方です。

 

 

こうなると難しいのが「”適切な”ってなんだ?」ということですよね?

 

普段からリハビリの指導をされている方などは分かると思いますが、実は患部を安静にさせることによる弊害というものがあります。

 

例えば、足関節捻挫をしてしまった人の足首を固定させた状態でずっとそのままにするとします。

そうすると一時的に足関節の可動域は狭くなってしまいます。

その状態で荷重の痛みがなくなったからと言って走り出したりすると、足関節の動きが制限されていることによって、他の部位、例えば膝関節や股関節で代償しなければいけなくなります。(これを”代償行動”と言います)

 

この代償行動が積み重なると、負荷が通常以上にかかり、膝を痛めたり腰を痛めたりします。

 

他にも再発率の増加などのリスクがありますが、ここでは実は安静による弊害があるということを認識していただければ構いません。

 

 

だからこそ、受傷直後の適切な負荷をかけていく必要があるのです。

 

ですが、適切な負荷に関しては人それぞれ患部の状態や傷害の程度などが違うため、一概に示すことができません。

 

つまり、POLICEを実現させるためにはきちんとした知識のある人による管理が必要なわけです。

 

実際それは多くの人にとって難しいかもしれませんね。。。

 

ちなみに先ほど紹介したNATAのPosition Statementにおいても「Ⅰ度Ⅱ度程度の損傷であれば固定するよりもファンクショナルなリハビリをする方が良い」とされています。

 

 

これまでの流れ

これまでRICE→PRICE→POLICEと進んできたわけですが、ざっくり変化をまとめてみると・・・

 

・Protection(保護)が推奨されるようになった

・Rest(安静)がなくなってきた。

 

ということでしょうか?

 

スポーツ現場で指導者や保護者が怪我をした選手に対して「とりあえず冷やしておけ!」と言っているのを耳にしたことがあります。

 

こういった人は知識が古いまま固まっているのでしょう。

 

実際問題、冷やすということに対しては賛否両論です。

具体的にはあとで述べますが、まちまちな結果なんです。

 

それに怪我は選手一人ひとり状態によって対応も変わっていきます。

 

そんなことを言っているときりがないため、PRICEなど「悪化することのなく」「特別な知識や技術を必要としない」ものを標語としているのでしょう。

 

そう考えるとPOLICEはOLの部分がどうしても素人には難しいですし、一般的な概念として適応するには不適切なのかもしれませんね。

 

「なるほど負荷をかければいいのか」とか言って不適切な負荷を与えてしまい再発であったり、悪化を招いてしまうことは避けなければいけません。

 

逆にトレーナーと言われる人たちなどは、自分の知識を使ってOLの部分を処方していかないと、良い対応とは言えません。

 

まとめると、きちんとした知識・技術を持った人が

・いる→POLICE

・いない→PRICE

としたら良いのかもしれません。

 

 

PEACE&LOVE

はいついにやってきました”PEACE&LOVE”

 

改めて参考文献はこちら↓

blogs.bmj.com

 

こちらもおなじみ"British Journal of Sports Medicine"にて発表されたものです。

 

それでは早速内容に移っていきましょう!

 

内容

P・・・Protection(保護)

E・・・Elevation(挙上)

A・・・Avoid anti-inflammatory modalities(抗炎症剤の使用を避ける)

C・・・Compression(圧迫)

E・・・Education(教育)

L・・・Loading(負荷)

O・・・Optimism(楽観視)

V・・・Vascularisation(脈管化)

E・・・Exercise(運動)

 

はいどう見ても解説必要な内容ですよね。笑

 

PEACE&LOVEはこの順番にも意味があります。

 

軟部組織の傷害の早急な応急処置にはPEACEを用います。

そして1日後のその後の対応としてLOVEを用います。

 

つまり①PEACE→②PEACE&LOVEということですね!

 

それでは新しく出てきた項目に関して解説していきます!

 

 

・Avoid anti-inflammatory modalities(抗炎症剤の使用を避ける)

 

こちらが各界に1番衝撃を与えた概念だと思います。

 

なぜかというと、今まで提唱されてきた「ICE(冷却)」が省かれたからです。

 

少し長めに解説します。

 

文献内では抗炎症剤の使用、すなわち炎症を抑えるための薬やアイシングは長期的な治癒プロセスにおいて有害なのではないかと言われています。

 

この背景には”炎症”という現象は軟部組織の最適な回復において非常に重要な現象であると考えられているからです。

 

もちろん”炎症”とは「損傷した組織を修復させるために患部に血液を積極的に流す」という人体の自然なプロセスであるため間違いありません。

 

そして抗炎症の薬だけでなくアイシングもその炎症を抑制するため避けたほうがいいと言われています。

 

 

しかし、個人的な意見としては微妙といった感想。。。

 

 

従来アイシングが用いられていた理由として、二次的な損傷の予防と習ってきました。

 

二次的な損傷とは損傷した細胞の周りの細胞(健全な細胞)が炎症反応によって酸素不足になり代謝が行えなくなったり、浮腫によって圧迫をうけ、ダメージを受けることです。

 

きっと参考文献に書かれていると思うので後々確認しますが、急性期の対応として抗炎症剤の使用を推奨しないのにはどういった理由があるのでしょうか?

 

また、仮に「炎症は必要で抑制すべきではない」とするならば、Compression(圧迫)のところで解説されている「関節内の浮腫や組織の出血を抑制する」ことや「腫脹を抑える」ことにはどのような意味があるのでしょうか?

 

炎症と1言で言っても「発赤」「熱感」「腫脹」「疼痛」「機能障害」で構成されており、これを「炎症の5徴」と言われています。

 

圧迫の解説をしているところで "inflammation"(炎症)という言葉が使われておらず、 "swelling"(腫脹)という表現が用いられていました。

 

炎症の5徴の中でも腫脹だけ防げれば良いということなのでしょうか・・・?

 

んー勉強不足ですみません!

 

 

もう1つだけ、いつまでも炎症を抑える目的でアイシングすることには私も反対です。

 

筋肉など軟部組織の治癒過程には以下の3つの段階があります。

①炎症期

②増殖期

③成熟期

 

先に述べた二次的損傷は基本的に①の炎症期によく起こります。

 

しかしこの炎症期以降もアイシングを続けた場合、組織の修復に必要な栄養や酸素を運搬する血液の流れが制限されてしまい、修復に悪影響を及ぼします。

 

そのため「患部の炎症状態によって炎症を抑える行為は止めたほうが良い」というのが一般的な見解です。

 

長くなったのでまとめると、抗炎症剤の使用に関しては様々な見解があり、判断が難しいです。

文献ではIceは省かれましたが、私は場合によっては使うべきであると考えているため、引き続き新たな研究がなされることを楽しみにしておきます。

 

 

 

次なる新たな概念として。。。

 

・Education(教育)

教育が入ったのは面白いですね!

 

非常に重要な概念です。

 

必要以上の受動的な治療をさせないということです。

 

長期的に見て能動的な治療を行えるようになることが非常に重要であると書かれています。

 

確かに、町の接骨院で頻繁に通っている高齢者とかも多いですよね。

もちろんそういった治療も大切ですが、治療家の人はきちんと能動的な治療を患者自身ができるように教育していく必要がありそうですね。

 

 

・Optimism(楽観視)

またまた面白い項目。

 

これは心理的な面からの治療ですね。

 

鬱傾向だとか恐怖心が回復を妨げるらしいです。

 

というわけで、選手の皆さんは怪我をした時も楽観的に行きましょう!

 

そして、治療家やトレーナー、コーチや保護者など、怪我人を支える人たちは怪我人が楽観的になれるようサポートしてあげましょう!

 

 

・Vascularisation(脈管化)

これは要は「運動などで血流を促して、組織の修復を早めよう」といった内容です。

 

「基本的には2~3日以降で痛みの無い運動を行いましょう。」

 

例えば足関節捻挫の人が行う上肢エルゴメーターとか荷重ができるなら簡単なボクササイズとかも良いですよね。

 

 

・Exercise(運動)

これはいわゆるリハビリですね。

 

怪我をして何もしないでおくと可動域が狭くなったり、固有受容器官と言われる身体の器官にあるセンサーが鈍ってしまったり、単純に筋力が落ちてしまいます。

 

そうなると再発のリスクが高くなったり、スポーツに復帰するまでの期間が長くなってしまったりします。

 

そうならないためにも、”痛みは避けたうえで”運動を初期から行っていきましょう!

 

 

 

 

まとめ

 

以上応急処置の変遷と新たな概念”PEACE&LOVE”について触れていきました。

 

結局アイシングはすべきなのかどうかといった問題や、適切な負荷ってなんだといった疑問を抱える方も多いと思います。

 

一概にどうすべきだとは未だ研究でも明らかになっていない部分が多いので言えませんが、1つだけ言えるとしたら「わからなければ専門家に頼りましょう」です。

 

Educationのところでもお話しましたが、「頼る」とは専門家から電気や鍼などの治療を受けましょうということではありません。

 

「専門家のアドバイスを受けて皆さんで治しましょう」ということです。

 

手術するなどは医者にしかできませんが、基本的に治すのは皆さん自身です。

 

ただ知識量が十分でない人が自己判断でケアをした場合、悪化してしまうなどのリスクがあります。

実際にこういった例は多く耳にします。

 

そこでしっかりと専門家に相談してしてはいけないことなどを確認したうえで、能動的に治していきましょう。

 

これが大切だと思います。

 

勉強不足で分かりにくいこともあったかもしれませんが、これは私の備忘録だと許していただければ幸いです。。。

引き続き最新の研究にアンテナを張っておきたいと思います!

 

とても長くなってしまいましたが、最後までありがとうございました!