学校にトレーナー!日米の現状と効果とは??
こんにちは!学生トレーナーの大野です!!
皆さん学校にトレーナーはいましたでしょうか?
実は日本には何校かトレーナーが常駐している学校があります!
今回はその現状と効果についてお伝えしていきます!
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学校のトレーナー in アメリカ
もちろんその認知度や普及度も日本とは大きく異なります。
では学校においてはどうでしょうか??
2017年にPikeらが行った調査を基に見ていきましょう!
https://natajournals.org/doi/10.4085/1062-6050-51.11.15
アメリカの私立と公立のSecondary School(中学校的な位置づけですかね)1万校以上を対象に行われた研究では、公立で70%、私立で58%、合計で67%のATの雇用が行われています。
感想は人それぞれですが、私は当初「非常に多い」と思いました!
ですがこの調査の"Conclusion"では以下のように述べられていました。
"Both public and private secondary schools lacked ATs"
(公立でも私立でも、ATが不足している)
これでも足りてないと感じるのかアメリカは!!
ちなみに雇用していない理由は「お金がない」が多いそうです。
他にはATの役割に関する認知不足、学校の規模が小さいこと、へき地にあることなどがありました。
さて、アメリカの現状について何となくご理解いただけましたでしょうか??
それでは日本について見てみましょう!
学校のトレーナー in 日本
さて皆さんお待たせいたしました。日本です。
日本のトレーナー介入事情について調査した研究なんてないと思っていたのですが、あったんですね~!
2017年に国際武道大学の先生方が行った調査になります!
高等学校運動部活動におけるスポーツトレーナー介入の実態に関する研究
それでは早速内容を見ていきましょう!
まず対象についてですが、先ほどの論文とは違い、部活動における調査です。
30都道府県における高等学校210校の教員814名を対象に行われました。
対象とした部活動は負傷発生件数が多く、部活動、部員数が多い男子硬式野球、男子サッカー、男子バスケットボール、女子バスケットボールの3競技4種目でした。
回収率は34%の278名でした。
気になる介入率ですが、結果はなんと……
32%!!
こちらも感想は人それぞれですが、「アメリカと比べたらめっちゃ少ないけど、思ったより多かった。」と思いました。
(正直そこまで期待していなかったので・・・。)
現実的な競技目標(≒競技レベル)との関係を見ると、やはりレベルの高い運動部活動は介入を受けているところが多いようですね。
以上の結果はあくまで部活動に介入している割合ですよね?
それでは学校に介入している割合は??
調査が見つけられなかったのですが、私が知っているのは以下の3校です。
※他にも知っているという方がいらっしゃいましたら是非教えてください!!
・八村塁を輩出した仙台の『明成高校』
「スクールAT」の実態。高校で働くアスレティックトレーナーの仕事って? | スポメディ!
・野球で有名な大阪の『浪商学園』
中高生アスリートのためにトレーナー室を開設した浪商学園の新たな挑戦(菊地慶剛) - 個人 - Yahoo!ニュース
・同じく野球の名門、東京の『早稲田実業』
アスレティックトレーナー|クラブ・委員会活動|早稲田実業学校
聞いたことあるスポーツの名門高校ですね!
そして明成高校は仙台大学、浪商学園は大阪体育大学と連携して行っている活動になります。
きっともっとあるんでしょうけど、少ないのは目に見えていますよね。。。
では、そもそも学校にトレーナーは必要なのでしょうか??
次は学校におけるトレーナーの効果について説明していきたいと思います!
学校のトレーナーの効果
そもそも、アスレティックトレーナーの役割は何でしょう?
日本スポーツ協会はATを以下のように定義しています。
「スポーツドクター及びコーチとの緊密な協力のもとに、競技者の健康管理、傷害予防、スポーツ外傷・障害の救急処置、アスレティックリハビリテーション及びトレーニング、コンディショニング等にあたる」者
そして役割として、以下の7つが示されています。
・スポーツ外傷・障害の予防
・スポーツ現場における救急処置
・アスレティックリハビリテーション
・コンディショニング
・測定と評価
・健康管理と組織運営
・教育的指導
健康管理から傷害の予防、リハビリ、ケア、教育、トレーニングまで行うことができる一見スーパーマンのような役割ですね。
見ていただいてわかるように、ATは「スペシャルテストでもありジェネラリストでもある」というのが実際です。
それでは、以下の論文を見てみましょう。
この論文はATがいる高校といない高校の女子サッカー部と女子バスケットボール部での違いを調べるといったものです。
結果は以下の通りです。
合計の傷害発生率、再発率、非接触/オーバーユースの傷害発生率の有意な低下
はい、すばらしいですね
また先ほども紹介した下の報告では、次のような主観的な変化が示されています。
高等学校運動部活動におけるスポーツトレーナー介入の実態に関する研究
・競技成績の向上
・身体のケアを自ら行う生徒が増えた(≒意識の向上)
・怪我人の減少
・怪我人の対応で困ったことが減った
いかがでしょうか?
上の事項に加え、さらに把握していただきたいのは、心肺蘇生や熱中症の対応、脳振盪の対応など、件数は少ないものの命に関わる傷害に関してもATは活躍でき得ります。
毎年毎年、熱中症や心停止での死者は報告されています。
さらに最近注目されている女子アスリートの生理問題。(また後日まとめます!)
普通の教員ではなかなか理解しコントロールしづらいのが現状です。
ATはこの役割ができるのではないでしょうか?
学校でのATは非常に重要であることがお分かりいただけましでしょうか?
まとめ
最後までお読みいただきありがとうございました!
今回私は学校でのATについて述べさせていただきました。
お分かりいただけた通り、ATは非常に重要な存在です。
私はこのATを学校現場に普及することが目標の1つです。
もし学校現場に関わっている方々はぜひ検討いただければと思います。
私で良ければぜひお力になりたいです。
ありがとうございました!
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子供の傷害予防とパフォーマンス向上に効く!?謎の運動プログラムとは?
こんにちは!学生トレーナーの大野です!!
本日は子供の傷害予防とパフォーマンス向上どちらにも劇的に効く!
そんな魔法みたいな運動プログラムについてご紹介いたします!
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魔法の運動プログラムとは??
小中学生の指導者や保護者の皆さん。
怪我を予防し、パフォーマンスを上げてくれる。
そんなものがあったら是非やりたいですよね??
実はそんなプログラムは存在するのです!!
その名も・・・
『11+ Kids'』
読み方は「イレブンプラス キッズ」と言います。
さてどんな内容なのでしょうか??
『11+ Kids'』とは??
11+ Kids' とはFIFA(国際サッカー連盟)が数年前(多分2015年ごろ)に作成した運動プログラムになります。
(FIFA 11+ Kids - Football NSWより引用)
もともと成人向けのウォーミングアッププログラムである『11+』が存在しており、それを発展させたものになります。(以下リンク参照)
11+ 日本語版|メディカルインフォメーション|サッカーファミリー|JFA|日本サッカー協会
『11+ Kids'』は7歳から13歳の子供を対象として作成され、3つの目的があります。
1つ目:デュアルタスク時の空間認知・予測・注意
2つ目:安定性と動作コーディネーション
3つ目:適切な倒れ方の技術
研究では約20分、週に2回で行われていることが多いです。
『11+ Kids'』の具体的な内容は以下のリンクにて動画付きで詳しく紹介されています!(Soccer Coaching.jpさんより)
サッカーコーチング専門サイト soccercoaching.jp - FIFA 11+ キッズ 第1回
『11+ Kids'』の効果に関するエビデンス
『11+ Kids'』は近年開発されたプログラムなので、未だに多くの研究が行われているわけではありません。
しかしながら、これまでに多くの成果が報告されています。
傷害予防の効果
研究によると普通のウォーミングアップを行った群に比べ、『11+ Kids'』を行った群は約50%もの傷害予防の効果が報告されています。
さらに、重症の傷害に関しては74%、下肢の傷害は55%の傷害予防効果が報告されています。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/31859034
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/29273936
https://bjsm.bmj.com/content/53/5/309
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/30279219/
パフォーマンスへの効果
普通のウォーミングアップを行った群に比べ、『11+ Kids'』を行った群は
ジャンプ、バランス、アジリティ能力の向上がみられたと報告されています。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5844920/
https://www.tandfonline.com/doi/abs/10.1080/02640414.2015.1099715
以上が報告されている効果になります。
すごいですよね!!!
現場での注意点
非常に便利な『11+ Kids'』ですが、行うにはいくつか注意点があります。
①下のレベルから始めて!
『11+ Kids'』には5段階のレベル分けが行われています。
いきなりハイレベルを行うのではなく、下のレベルを確実に行えるようになってから次の段階に進んでください。
②地面の安全は確保!
日本の少年少女が練習を行う現場は砂が多いですよね?
手を下についたり前転を行うことがあるので、落ちている石やガラス、木の枝など、怪我する可能性のあるものは確実に排除しておきましょう。
③モチベーションの維持は大切に!
もちろん、ちゃんとやらなければ効果が薄れてしまいます。
小学生によく言えることですが、楽しくないと基本的にすぐ飽きてしまいます。競争要素を入れたり、雰囲気作りで楽しく思ないことを意識しましょう。
まとめ
今回は子供の傷害予防やパフォーマンス向上に効果があると報告されている『11+ Kids'』について紹介いたしました。
今回の内容はあくまで完全な正解ではありませんので、各自が多少のアレンジを加えても基本的には何の問題もありません。
ぜひ、皆さんも『11+ Kids'』を行ってみてはいかがでしょう??
ありがとうございました!
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改めて自己紹介
お久しぶりです!大野です!
今年から鍼灸マッサージの専門学校に通いながら、フリーランスとしてトレーナー活動をします!
今回は改めて自己紹介をさせていただきます!
予めお伝えしますが、今回は決して勉強になるようなことは書いていません(笑)
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大野隆滉の略歴
【出身】
神奈川県川崎市
【サッカー歴】
~2010.3 南百合丘SC
~2013.3 FC多摩
~2016.3 多摩大学目黒
~2019.12 筑波大学蹴球部
【大学内活動】
2017~2019年 筑波大学蹴球部 学生トレーナー
2017~2018年 学生トレーナーズミーティング 幹部
2018~2019年 外科系スポーツ医学研究室
【大学外活動】
2018年8~9月 Stanford University Football club(インターン)
【関心ごと】
~トレーナー関係~
・傷害予防
・リハビリ
・コンディショニング
・心理学
・育成年代
・スポーツセーフティ
~その他~
・アウトドア(スキー、スノボー、登山等)
・読書
・組織作り
【ひとこと】
2020年より個人事業主として活動します!
週の何日かはチーム帯同をしますが、講習会、講演会等々、幅広く、興味の向くままに活動していきます!
Twitterでは日々の活動や考えを発信していきたいと思っています!
是非フォローをよろしくお願いいたします!!
RICEで止まっていませんか?応急処置の変遷と新たな概念 "PEACE & LOVE" とは?
皆さんこんにちは。
大野です。
すみません最近更新できませんでした。。。
細くも長く続けていけたらと思っていますので、引き続きお願いしますm(_ _)m
ということで本日は新たな応急処置の考え方 "PEACE & LOVE" についていけたらと思います。
今回の出典はこちら!
こちらはイギリスのスポーツ医学に関する有名なジャーナルである "British Journal of Sports Medicine" のブログで書かれた内容になります。
ブログといってもしっかり文献を参考にして書かれていますので、適当なものではありませんのでご安心ください。
それでは!
応急処置の変遷
さて、皆さんが知っている応急処置の考えは何でしょうか?
”RICE”を聞いたことある人は多いと思います。
ですが変遷としては"ICE"→"RICE"という流れがあって、その後に "PRICE" や "POLICE" という概念へ発展していきました。
そして今回紹介するのは "PEACE & LOVE" という最新の案内です!
その前に上で紹介した3つについて簡単に触れていきましょう!
RICE
言わずと知れた"RICE"。それでは簡単に見ていきましょう。
参考文献はこちら↓
足関節捻挫に対する応急処置の話ですね。
基本的な情報として・・・
Rest(安静)
Ice(冷却)
Compression(圧迫)
Elevation(挙上)
の頭文字をとったものです。
具体的な研究内容は省きますが、キーポイントとしては3点まとめられていましたが、以下にそのうちの2点を掲載しておきます。
・今回のランダム化比較試験によって足関節捻挫に対するRICEが有効であると決定づけるには不十分なエビデンスが示された。
・治療や応急処置の決定はそれぞれの方法の相対リスクや効果の比較検討を行った上で、個人に応じてされなければならず、さらに専門家の意見とガイドラインにのっとっているべきである。
まー研究としては効果はまちまちということですね。
ちなみに世界で最高級に良いエビデンスがまとめられている全米アスレチックトレーナーズ協会(NATA)の "Position Statement" でもアイシングと圧迫、挙上に関しては推奨されてはいましたが、エビデンスレベルが"C"と最も低い値となりました。
現場で使うには問題ないといった程度でしょうか??
PRICE
RICEの次に出てきた概念として有名なのがこちら。
トレーナーの方や、しっかりと勉強されている方は知っている人も多いかと思います。
参考文献としてはこちら↓
https://www.physiosinsport.org/media/wysiwyg/ACPSM_Physio_Price_A4.pdf
同じく足関節捻挫に対する応急処置の話です。
こちらもササっと内容確認しましょう。
こちらは先ほどのRICEに"Protection" の"P"が加わったものになります。
"Protection"とは”保護”のことで、患部を固定するなり松葉杖で非荷重にするなりで痛みが出ないようにしましょうと言ったもの。
「RestとProtectionは少なからず受傷後3日はすべきでしょう」とのこと。
どうやらProtectionはエビデンスがどうこうというわけではなく、現場の声(経験知)としてあるべきものを追加したようですね。
正直上の参考文献はかーなり長い文献ですが、後に説明する「受傷直後に適切な負荷をかける」ことに関しても説明されており、なかなか読みごたえがありました!
医療従事者の方やトレーナーを目指す方などは是非1度読んでみてください!
POLICE
さてこちらがPRICEの後に出された概念です。
その名も”POLICE”です。
こちらの参考文献はこちら↓
こちらの文献はイギリスのスポーツ医学に関するジャーナル"British Journal of Sports Medicine"にて発表されたものです。
POLICEの内容から確認していきましょう。
P・・・Protection(保護)
OL・・・Optimal Loading(適切な負荷)
I・・・Ice(冷却)
C・・・Compression(圧迫)
E・・・Elevation(挙上)
変化としては"Rest"がなくなり、新たに"Optimal Loading"(OL)が追加されました。
"Optimal Loading"(OL)とは改めて、「適切な負荷」という意味です。
語弊を恐れずに説明すると「受傷したら何もしないのではなく、患部にどんどん負荷をかけていこう」といったような考え方です。
こうなると難しいのが「”適切な”ってなんだ?」ということですよね?
普段からリハビリの指導をされている方などは分かると思いますが、実は患部を安静にさせることによる弊害というものがあります。
例えば、足関節捻挫をしてしまった人の足首を固定させた状態でずっとそのままにするとします。
そうすると一時的に足関節の可動域は狭くなってしまいます。
その状態で荷重の痛みがなくなったからと言って走り出したりすると、足関節の動きが制限されていることによって、他の部位、例えば膝関節や股関節で代償しなければいけなくなります。(これを”代償行動”と言います)
この代償行動が積み重なると、負荷が通常以上にかかり、膝を痛めたり腰を痛めたりします。
他にも再発率の増加などのリスクがありますが、ここでは実は安静による弊害があるということを認識していただければ構いません。
だからこそ、受傷直後の適切な負荷をかけていく必要があるのです。
ですが、適切な負荷に関しては人それぞれ患部の状態や傷害の程度などが違うため、一概に示すことができません。
つまり、POLICEを実現させるためにはきちんとした知識のある人による管理が必要なわけです。
実際それは多くの人にとって難しいかもしれませんね。。。
ちなみに先ほど紹介したNATAのPosition Statementにおいても「Ⅰ度Ⅱ度程度の損傷であれば固定するよりもファンクショナルなリハビリをする方が良い」とされています。
これまでの流れ
これまでRICE→PRICE→POLICEと進んできたわけですが、ざっくり変化をまとめてみると・・・
・Protection(保護)が推奨されるようになった
・Rest(安静)がなくなってきた。
ということでしょうか?
スポーツ現場で指導者や保護者が怪我をした選手に対して「とりあえず冷やしておけ!」と言っているのを耳にしたことがあります。
こういった人は知識が古いまま固まっているのでしょう。
実際問題、冷やすということに対しては賛否両論です。
具体的にはあとで述べますが、まちまちな結果なんです。
それに怪我は選手一人ひとり状態によって対応も変わっていきます。
そんなことを言っているときりがないため、PRICEなど「悪化することのなく」「特別な知識や技術を必要としない」ものを標語としているのでしょう。
そう考えるとPOLICEはOLの部分がどうしても素人には難しいですし、一般的な概念として適応するには不適切なのかもしれませんね。
「なるほど負荷をかければいいのか」とか言って不適切な負荷を与えてしまい再発であったり、悪化を招いてしまうことは避けなければいけません。
逆にトレーナーと言われる人たちなどは、自分の知識を使ってOLの部分を処方していかないと、良い対応とは言えません。
まとめると、きちんとした知識・技術を持った人が
・いる→POLICE
・いない→PRICE
としたら良いのかもしれません。
PEACE&LOVE
はいついにやってきました”PEACE&LOVE”
改めて参考文献はこちら↓
こちらもおなじみ"British Journal of Sports Medicine"にて発表されたものです。
それでは早速内容に移っていきましょう!
内容
P・・・Protection(保護)
E・・・Elevation(挙上)
A・・・Avoid anti-inflammatory modalities(抗炎症剤の使用を避ける)
C・・・Compression(圧迫)
E・・・Education(教育)
&
L・・・Loading(負荷)
O・・・Optimism(楽観視)
V・・・Vascularisation(脈管化)
E・・・Exercise(運動)
はいどう見ても解説必要な内容ですよね。笑
PEACE&LOVEはこの順番にも意味があります。
軟部組織の傷害の早急な応急処置にはPEACEを用います。
そして1日後のその後の対応としてLOVEを用います。
つまり①PEACE→②PEACE&LOVEということですね!
それでは新しく出てきた項目に関して解説していきます!
・Avoid anti-inflammatory modalities(抗炎症剤の使用を避ける)
こちらが各界に1番衝撃を与えた概念だと思います。
なぜかというと、今まで提唱されてきた「ICE(冷却)」が省かれたからです。
少し長めに解説します。
文献内では抗炎症剤の使用、すなわち炎症を抑えるための薬やアイシングは長期的な治癒プロセスにおいて有害なのではないかと言われています。
この背景には”炎症”という現象は軟部組織の最適な回復において非常に重要な現象であると考えられているからです。
もちろん”炎症”とは「損傷した組織を修復させるために患部に血液を積極的に流す」という人体の自然なプロセスであるため間違いありません。
そして抗炎症の薬だけでなくアイシングもその炎症を抑制するため避けたほうがいいと言われています。
しかし、個人的な意見としては微妙といった感想。。。
従来アイシングが用いられていた理由として、二次的な損傷の予防と習ってきました。
二次的な損傷とは損傷した細胞の周りの細胞(健全な細胞)が炎症反応によって酸素不足になり代謝が行えなくなったり、浮腫によって圧迫をうけ、ダメージを受けることです。
きっと参考文献に書かれていると思うので後々確認しますが、急性期の対応として抗炎症剤の使用を推奨しないのにはどういった理由があるのでしょうか?
また、仮に「炎症は必要で抑制すべきではない」とするならば、Compression(圧迫)のところで解説されている「関節内の浮腫や組織の出血を抑制する」ことや「腫脹を抑える」ことにはどのような意味があるのでしょうか?
炎症と1言で言っても「発赤」「熱感」「腫脹」「疼痛」「機能障害」で構成されており、これを「炎症の5徴」と言われています。
圧迫の解説をしているところで "inflammation"(炎症)という言葉が使われておらず、 "swelling"(腫脹)という表現が用いられていました。
炎症の5徴の中でも腫脹だけ防げれば良いということなのでしょうか・・・?
んー勉強不足ですみません!
もう1つだけ、いつまでも炎症を抑える目的でアイシングすることには私も反対です。
筋肉など軟部組織の治癒過程には以下の3つの段階があります。
①炎症期
②増殖期
③成熟期
先に述べた二次的損傷は基本的に①の炎症期によく起こります。
しかしこの炎症期以降もアイシングを続けた場合、組織の修復に必要な栄養や酸素を運搬する血液の流れが制限されてしまい、修復に悪影響を及ぼします。
そのため「患部の炎症状態によって炎症を抑える行為は止めたほうが良い」というのが一般的な見解です。
長くなったのでまとめると、抗炎症剤の使用に関しては様々な見解があり、判断が難しいです。
文献ではIceは省かれましたが、私は場合によっては使うべきであると考えているため、引き続き新たな研究がなされることを楽しみにしておきます。
次なる新たな概念として。。。
・Education(教育)
教育が入ったのは面白いですね!
非常に重要な概念です。
必要以上の受動的な治療をさせないということです。
長期的に見て能動的な治療を行えるようになることが非常に重要であると書かれています。
確かに、町の接骨院で頻繁に通っている高齢者とかも多いですよね。
もちろんそういった治療も大切ですが、治療家の人はきちんと能動的な治療を患者自身ができるように教育していく必要がありそうですね。
・Optimism(楽観視)
またまた面白い項目。
これは心理的な面からの治療ですね。
鬱傾向だとか恐怖心が回復を妨げるらしいです。
というわけで、選手の皆さんは怪我をした時も楽観的に行きましょう!
そして、治療家やトレーナー、コーチや保護者など、怪我人を支える人たちは怪我人が楽観的になれるようサポートしてあげましょう!
・Vascularisation(脈管化)
これは要は「運動などで血流を促して、組織の修復を早めよう」といった内容です。
「基本的には2~3日以降で痛みの無い運動を行いましょう。」
例えば足関節捻挫の人が行う上肢エルゴメーターとか荷重ができるなら簡単なボクササイズとかも良いですよね。
・Exercise(運動)
これはいわゆるリハビリですね。
怪我をして何もしないでおくと可動域が狭くなったり、固有受容器官と言われる身体の器官にあるセンサーが鈍ってしまったり、単純に筋力が落ちてしまいます。
そうなると再発のリスクが高くなったり、スポーツに復帰するまでの期間が長くなってしまったりします。
そうならないためにも、”痛みは避けたうえで”運動を初期から行っていきましょう!
まとめ
以上応急処置の変遷と新たな概念”PEACE&LOVE”について触れていきました。
結局アイシングはすべきなのかどうかといった問題や、適切な負荷ってなんだといった疑問を抱える方も多いと思います。
一概にどうすべきだとは未だ研究でも明らかになっていない部分が多いので言えませんが、1つだけ言えるとしたら「わからなければ専門家に頼りましょう」です。
Educationのところでもお話しましたが、「頼る」とは専門家から電気や鍼などの治療を受けましょうということではありません。
「専門家のアドバイスを受けて皆さんで治しましょう」ということです。
手術するなどは医者にしかできませんが、基本的に治すのは皆さん自身です。
ただ知識量が十分でない人が自己判断でケアをした場合、悪化してしまうなどのリスクがあります。
実際にこういった例は多く耳にします。
そこでしっかりと専門家に相談してしてはいけないことなどを確認したうえで、能動的に治していきましょう。
これが大切だと思います。
勉強不足で分かりにくいこともあったかもしれませんが、これは私の備忘録だと許していただければ幸いです。。。
引き続き最新の研究にアンテナを張っておきたいと思います!
とても長くなってしまいましたが、最後までありがとうございました!
脳振盪教育の効果はどのくらい?
こんにちは。大野です。
前回脳震盪の知識レベルについて記事を書かせてもらいました!
前回の記事では大学のクラブに所属しているアスリートがある程度高い知識レベルを持っていることが分かりました。
ですが中には正しく脳振盪の症状を認識できなかったりというリスクがあることが分かりました。
そこで今回は教育の段階としてこの論文を紹介します!!
この論文はサッカー選手を対象に行っているんですけど、教育プログラムをどのように開発し、それを評価しているのか具体的に記載してあって非常に面白かったです!
それでは早速内容に映りましょう!
【題名】
プロサッカー選手に対する脳振盪教育モジュール:実用可能性と効果へ向けたシステマティックな発展
【背景】
脳震盪はそのコリジョンスポーツにおける発生率の高さや、短期的かつ長期的な影響から、マネジメントだけではなく、予防に対しても重要視がされている。
例えばラグビーにおいては脳震盪を含む傷害の減少を目的とした予防とタックルテクニックへのコーチングに対する重要性が広く受け入れられている。
一方サッカーにおいても脳震盪の発生率はそこまで高くはないものの、選手や運営者、メディカルスタッフへの徹底した教育の必要性が強調されている。
そういった背景に伴い、国際サッカー選手会(FIFPro)はプロサッカー選手に対する脳震盪の教育モジュールの開発と実施を始めた。
【目的】
作成した脳振盪教育モジュールの実行可能性や知識や態度を向上させ得るかどうかの検討を行う。
【方法】
①現役であり、②16歳以上で、③英語を読み、理解することができるプロサッカー選手を対象に行った。
脳振盪に対する知識と態度に対しては Rosenbaum Concussion Knowledge and Attitude Survey(RoCKAS)のConcussion Knowledge Index(CKI)※とConcussion Attitude Index(CAI)※※を用いた。
・実行可能性に関してはこの脳振盪モジュールの①適切さ、②付加価値、③形式の適切さ、④動画の長さの適切さの4項目を5段階評価で回答してもらい調査した。
・CAIとCKIはモジュール前後に測定され、実行可能性はモジュール後に測定された。
※ CKI:正誤問題や脳振盪の一般的な理解についての問題を含む。0~25点で評価される。
※※ CAI:1~5のリッカート尺度を用い、最も安全な行為を反映した答えを選ぶ。15~75点で評価される
【統計】
CKIとCAIのモジュール前後比較
→ウィルコクソン符号順位検定
【結果】
・CKIにおいて有意な変化は見られなかった。(Z=213, p=0.16)
・CAIにおいて有意に向上がみられた。(Z=331, p=0.01)
・動画の長さと形式に関してはすべての被検者が肯定的な評価を示した。(100%)
【結論】
今回の脳振盪教育モジュールの開発はプロサッカー選手のより良いCAIへとつながった。
【自分のコメント】
今回の論文で気になるのは、同じテストをモジュール前後で行ったように見えることで会う。
同じテストを行えば、点数が上がることは想像できるので、果たしてその影響はどの程度あるのだろうかということですね。
いずれにせよ、脳振盪に対する態度(CAI)が向上したのは非常に重要な点だと感じています。
脳振盪の疑いがあると自身で気づいていても隠す人がいるというのは先行研究でも明らかになっています。
この点に関して、その隠ぺいを抑制する因子となればいいですね。
そう考えると、行動心理学のプロフェッショナルとともに教育モジュールの作成をしていく必要がありそうですね。
自分も日本において使える教育モジュールを作りたいものです。
今回は以上です!
それでは・・・。
脳振盪を知ってる?報告する?~大学クラブスポーツver~
皆さんこんにちは。大野です。
皆さん、そもそも脳振盪をご存知ですか?
今回その詳細を述べるのは見送りますが、脳振盪について正しい知識を持つことは大変必要です。
なぜか?
それは脳振盪になったとき、それを脳振盪と正しく認識できることが必要であるからです。
脳振盪の症状は足関節の捻挫や骨折などと比べ、頭痛や怒りっぽくなるなど、脳振盪と直接的に認識できる、脳振盪独特のものではありません。
だから知識がないと今の状態を脳振盪と気づかずにプレーしてしまう、みたいなことも起こりりますよね。
今回はアメリカの Duquesne University の Beidler が発表したこの論文です!
https://natajournals.org/doi/pdf/10.4085/1062-6050-266-17
忙しい人のために結論だけお伝えすると、「大学のクラブに所属するアスリートはスポーツ関連脳振盪に関する知識は多く持っているものの、必ずしも報告行動まではつながらない」とのことです。
それでは早速内容にいきます!
目次
【題名】
スポーツ関連脳振盪:大学クラブに所属する知識と報告行動
【背景】
先行研究においてスポーツ関連脳振盪(SRC)に関する知識レベルと報告行動に関する調査は高校と全米大学協会(NCAA)に所属するアスリートに限られており、大学クラブに所属するアスリートにおける研究は限られている。
【目的】
大学クラブに所属するアスリートのSRCに関する知識レベルと報告行動の実態を明らかにし、traditional sports※と nontraditional sports のクラブに所属するアスリートのそれらの違いについて調査する。
※シーズン後のNCAAチャンピオンシップにて行われる種目(例:ホッケー、サッカー、体操等)
【方法】
大学クラブに所属するアスリート410名(男性247名、女性163名、traditional=244、nontraditional=165)を対象に調査が行われた。
①SRCの兆候や症状を問う〇✖クイズ、SRCの一般的な知識を問うテストの2つに回答する。
②「なぜSRCの報告しなかったのか」に回答
【統計】
・traditional と nontraditional のSRCに関するテストの点数比較
→ANOVA(p≦.05)
・大学クラブのタイプとSRCの報告をしなかった理由の関係性を調査
→カイ2乗検定(p≦.05)
【結果】
- SRCの兆候や症状に関するテスト結果は全体的に高い値を示した。(29点中01±3.19)
- SRCに関する一般的な知識テスト結果は43点中49±4.16となった。
- 伝統的なクラブと非伝統的なクラブのSRCに関するテスト結果では違いがみられなかった。
- 最も共通していたSRCを報告しない理由は“SRCを大した傷害だと認識していない”であった。
- SRCを報告しない理由して以下の5つにおいて有意な差がみられた。(下表参照)
【結論】
大学のクラブに所属するアスリートはスポーツ関連脳振盪に関する知識は多く持っているものの、必ずしも報告行動まではつながらない可能性が示された。
【私のコメント】
今回の研究で重要なのは測定方法であると思います。
今回SRCの知識レベルの測定に Mihalik の開発したテストに少し手を加えたものを使用していました。
また報告行動の測定は McCrea によって開発され、Wallanceにより手を加えられた手法が用いられていました。
これらのテストが作られた過程についてよく調べて、今回の実験対象に対して用いることが適切だったのかどうかも検討する必要がありそうです。
ちなみに私はアメリカでトレーナーのインターンをしたことがあるのですが、向こうでは脳振盪の啓発が非常に盛んでした。
日本とアメリカでは大分環境が違うので、そのまま日本に当てはめることは当然できません。
ただ、やはりアメリカでは脳振盪の知識レベルは最低限持ち合わせているんだなと。
日本における海外との比較と報告行動まで見据えた教育プログラムの開発などについて研究を行えると楽しそうですね。
それでは本日もありがとうございました。
トレーナーがいるだけで怪我が減る?
皆さんこんにちは。大野です。
今回ご紹介する論文は University of Colorado の Lauren が発表したこちらの論文です。
面倒な人のために結論だけ言うと、「アスレティックトレーナーを配置している高校の女子サッカー部と女子バスケットボールでは傷害発生率と再発率が少ないよ!」ということです!
これを3年生の時に読んで、こんな研究したいな~と漠然と思ったことを覚えています。
アブストラクトの翻訳程度なので、詳細はリンクから飛んでください!
それでは早速内容に。
目次
【題名】
女子サッカーと女子バスケットボールにおける傷害調査:アスレティックトレーナーがいる高校とそうでない高校の比較
【背景】
アメリカでは多くの高校生がスポーツ活動に参加しており、同時に毎年多くの学生が怪我をしている。それらは選手やその家族に、身体的・精神的、経済的な負担を与える。そして怪我が原因で生徒がスポーツ参加を中断してしまうことも多い。
そういった背景を踏まえ、アスレティックトレーナー(AT)がもたらしうる利益から中学校、高校での配置が推奨されている。
しかし高校にATがいることの効果に関して、傷害発生率を直接的に調べたものはない。
【目的】
ATがいる高校といない高校それぞれの女子バスケットボール部と女子サッカー部の疫学調査を行い比較すること。
【方法】
調査期間は2006/07~2008/09シーズン。
ATがいる高校の傷害データは High School Reporting Information Online (RIO) を用いて収集。
ATがいない高校の傷害データは Sports Injury Surveillance System (SISS) を用いて収集。
Athlete Exposure(AE) を算出し、10,000AEsごとの傷害発生率で比較を行った。
【統計】
率比(RR)と傷害の割合比(IPR)の信頼区間は95%信頼区間で算出された。
信頼区間に 1.00 を含まないものを「統計学的に有意である」とした。
【結果】
ATがいない学校のほうが、ATがいる学校に比べ全体的な傷害発生率と再発率が有意に高かった。
ATがいる学校のほうが、ATがいない学校に比べ、脳振盪の発生率が有意に高かった。
【結論】
今回の対象部活動における、傷害発生率や再発率の低下、脳震盪のある選手の見分け等、ATのポジティブな影響に関するデータを示した。
【私のコメント 】
こういう研究の場合、どうしても気になるのはバイアス的な所ですよね。
SISSとRIOは別々で収集されているけど、そこのずれはどの程度のものなのか?
いずれにせよ、この研究個人的にはなかなか面白いです。
私もこういったところからATの必要性を説いていければいいなと思っています。
ひとまず今回は終了。
今後もいろいろと探りながら投稿していきます。